本の見出しやネット記事のタイトルなど、ここ数年とても過激になってきていることをご存じでしょうか?中身を読んでもらうためにタイトルをつけるのが一般的ですが、中身はどうでもよく、クリックさせてしまえばこっちのものという考えが雑誌媒体や新聞媒体で浸透しており、これがネット広告の世界にも波及しています。この現状を株式会社AtOffの代表取締役社長、柴垣敏久さんは憂うとともに、過激な広告を続ければ何が起きるのか、鋭く指摘します。
ほとんどのユーザーがネット広告を嫌う時代に

全国の学生を対象にしたSNS広告に関するアンケートがあり、その結果を見ると、柴垣敏久さんもびっくりするようなデータが出ています。SNS広告を見て不愉快に感じたことはあるかという質問に対し、なんと9割の学生が不愉快に感じたことがあると回答しています。どのような広告に不愉快さを感じるかを見ていくと、主に外見コンプレックスを持つ人が不快に感じたケースが多いのだとか。脱毛を促す広告、サプリを飲んで胸を大きくすることを促す広告、肌荒れはいいことがないからと治療を促す広告など様々です。
学生の時期は何事にも敏感な時期であり、体調の変化でニキビができやすかったり、太りやすかったりする時期です。そして、体は大人になっても心の中はまだ子供というケースも少なくなく、いわば根拠のない自信に支えられ、簡単に自信が揺らいでしまうような状態の中、自分の外見に直結するネガティブな広告を見てしまい、不愉快に感じた学生がたくさんいたとしても不思議ではありません。柴垣敏久さんは、このような広告を続ければ、いずれ今の若い世代が大人になっていく中で、ネット広告に対するネガティブな印象しか持たなくなると考えています。
その一方、若い世代だけがネット広告に不快な気持ちを持っているわけではなく、すべての世代で同じことを思われていることが他のアンケートでも明らかにされています。それぞれの媒体で広告のイメージを尋ねたところ、パソコンやタブレット、スマートフォン、それぞれに登場するネット広告に不快な気持ちや邪魔、うっとうしいという気持ちを抱いている人が多くいます。邪魔、うっとうしいという感情はテレビやラジオなどのCMでも一定数存在しますが、倍以上うっとうしいと思われていることが明らかにされています。また、怪しいという印象も乗っかっており、ネット広告は、不快でうっとうしくて怪しいという、広告としての意味をなさない状態を作り出そうとしています。これではいけません。
ネット広告で検索をかけると、「不快」、「効果ない」などの第2検索キーワードが出てきます。現状ですらネット広告への評価は落ちており、広告そのものへの嫌悪感につながりかねません。
予期せぬところで表示される広告

ネット広告を出す企業側からすれば、費用対効果の高いところで表示されるのが一番いいわけですが、なんでこんなところで表示されるの?とびっくりすることもあるそうです。例えば、サイト側が広告収入を得るためにGoogle広告を出せるように枠をいくつか設けたとします。いわば、この部分にGoogleから配信された広告が表示されるようにするという意味合いがあります。そのため、サイト側からしたら、どのサイトが表示されるかは当然わかりません。たいていの場合、表示される広告はユーザーにとって関連のある広告がほとんどです。年齢や性別、今まで検索したりクリックしたりしたところから探っていき、興味がありそうな広告を出します。
例えば、マジメにネット広告に取り組み、真剣にデザインまで考えて広告を出稿する企業もありますが、それが健全性に乏しいサイトで表示されてしまう可能性もあります。中身があまりにもひどく、人権侵害を誘発しているようなサイトで表示されてしまうことだってあるわけです。そうなれば、あのひどいサイトにあの企業の広告が表示されていたとみんながびっくりしてしまいます。柴垣敏久さんは、その人の検索結果などで表示される広告が変化するやり方に一定の評価こそするものの、誰にとってそれは得をすることなのだろうかと疑問に思っています。
企業側はどこに広告が掲載されるのかわからないため、デマばかりを載せるまとめサイトに出てしまうこともあり、2021年に入ってからも大きな問題となっています。掲載する側は広告収入さえ入ればよく、そのために過激なコンテンツを作りがちですが、その責任はそう簡単にとれるものではありません。しかも、大手企業が被害を受けていることもあり、いずれこのシステムは代わっていくことでしょう。
柴垣敏久さんが考える新たなネット広告のあり方

ネット広告自体は今後も増えていくことが予想され、ネット広告が朽ち果てることはまず考えられません。そして、ネットが広告で重要なポジションになるということは、それなりに規制が始まる可能性を意味します。現状テレビやラジオなど既存メディアではそれぞれの媒体で自粛や制限を行っているケースがあります。以前はタバコのCMが頻繁に出てきましたが、今はテレビなどでそのCMを見ることがありません。子供に悪影響を与えるというのが理由で、テレビドラマですらタバコを吸うシーンが使えないなど、状況は大きく変わっています。コンビニでもいかがわしい雑誌を子供が購入できないようにする状態になるなど、色々と対策がとられている中、ネットは事実上、無法地帯です。何をやっても許されますし、規制らしい規制もなければ、自粛や制限を行っている動きもなく、検索エンジン側にすべてが委ねられます。
柴垣敏久さんは検索エンジン側にすべてが委ねられる現状は決して健全な状態ではないと警告を鳴らす一方、そのような状況を生み出した、なんでもありのネット広告の現状を嘆きます。そして、柴垣敏久さんはCookie規制がもたらす、新たなネット広告の可能性を考えています。Cookieとは、サイトの情報をパソコンやスマホに保存するためのもので、これがあることで特定の端末までたどり着くことができます。これだと個人を特定しやすくなり、先ほどの問題につながるというわけです。このCookieを世界的に規制しようというのがCookie規制です。
アメリカではオンラインサービスを展開する事業者が子供のデータを取得する場合には、事前に親から同意を得なければならないとしています。ネット接続のおもちゃにも適用されるため、ニンテンドースイッチなどで子供が遊ぶ場合も、このような規制の対象になる場合があります。
Cookie規制によって、どの年代の人がどのページにたどり着いたかという情報が入りにくくなっており、マーケティングをする上で大変な時代を迎えたと柴垣敏久さんは憂いており、新たなネット広告を今すぐに生み出さないと大変なことになるとしています。柴垣敏久さんは、集めるデータの透明性をまずは確保し、安全に使用されていることをアピールすること、そして、今後LINEがネット広告の重要なキーになっていくのではないかと考えています。ユーザーが積極的にお友達の追加をすれば、自分自身が決めたことなので、不快に感じることは少ないはずです。どこに出てくるかわからないネット広告より、LINEでつながるネット広告の方が主流になってくるのではないかと柴垣敏久さんは主張します。